手外科専門医とは
手外科学会専門医像
手外科専門医は、整形外科または形成外科専門医であり、上肢全般、特に手疾患に関する医学的スペシャリストである。人間の社会的活動における上肢の重要度を認識し、高い社会的倫理観の下に、日々進歩する医学の新しい知識と技術の修得に努め、整形外科学または形成外科学を基盤として上肢に関わる疾患の病態を詳細に把握し、優れた診療実践能力を有する医師である。
手外科専門医は、生活習慣や災害、スポーツ活動によって発生する上肢全般、特に手に関する疾患と障害の発生予防・診療に関して、整形外科または形成外科専門医サブスペシャリティとしての能力を基に、社会が求める最新の医療を提供し、国民の運動器の健全な発育と健康維持に貢献することに努めている。
手外科専門医は、上肢運動器、特に手運動器疾患全般に関して、早期診断、保存的・手術的治療ならびにリハビリテーション治療など整形外科または形成外科専門医サブスペシャリティとしての能力を備え、整形外科または形成外科専門医へ日常診療における指導、助言、支援を行い、運動器疾患に関する良質かつ安全で心のこもった医療を提供することに努めている。
手外科専門医が扱うケガ、病気
手外科専門医は、次のようなケガ、病気を扱っています。
切断された組織の再接合
手は常に露出し、使用頻度も高く、それだけ外傷を受けやすい部位です。切断された血管、神経、腱は、細くて縫合が難しく、マイクロサージャリー(顕微鏡拡大下での手術)の技術を使って接合します。切断指再接合などを行うのも手外科専門医です。
粉砕骨折の整復・固定
上肢の単純な骨折治療は一般整形外科医が行いますが、手首の骨折などは整復が難しく、変形治癒になりやすいため、手の機能を失うことがあります。手外科専門医は、手首の解剖を熟知しており、難しい骨折も元の形に整復固定し、かつ、早期にリハビリテーションを行い正常な機能に戻します。
手のしびれ、痛みの治療
手のしびれや痛みは、手首(手根管症候群)、肘(肘部管症候群)、肩(胸郭出口症候群)に原因があることが多く、これらは神経の圧迫を手術的に取り除くことにより、しびれや疼痛は和らぎます。このような手術は傷つきやすい神経を扱うため、手外科専門医は、特別な教育、研修を受けており、安全、確実に手術を行うことができます。
失われた運動機能の再建
麻痺して動かなくなった指や手首は、他の部位の腱や筋肉を移動(移行術と言います)することにより、再度動くようになります。これには局所の機能、解剖を熟知し、繊細で高度な手術技術が必要ですので手外科専門医の仕事です。
欠損した組織の修復
外傷や腫瘍切除により欠損した骨、皮膚を補填するために、体の他の部位から同じような組織を移植して、元の機能や形態に再建します。
先天異常の治療
先天的な手指の異常の治療も手外科専門医の重要な仕事です。小児の手指は小さいので、手術は難しく、マイクロサージャリーの技術が必要です。
手外科専門医の基準
「手外科専門医」は、整形外科/形成外科 専門医の中の手外科診断・治療に関するエキスパートです。
・医師国家試験に合格し、医師免許証を有しています。
日本整形外科学会/日本形成外科学会 に入会し、6年間の研修を受け、整形外科/形成外科 専門医試験に合格しています。
・日本手外科学会に入会し、5年以上手の外科に関する研修を受け、手の外科専門医試験に合格しています。
・「手外科専門医」試験を受けるための資格は
学会が作成した研修カリキュラムに沿って研修し、通算5年以上手外科に関する研修期間を有し、その内、日本手外科学会認定研修施設で通算3年以上の研修期間を有すること、手外科すべての分野の病気や外傷(ケガ)について、学会で定められた基準を満たした診断・治療に携わり、手外科関係の学会で発表し、学術専門雑誌に論文として発表した経験のあることが条件になっています。
・研修内容は
5年間研修するガイドライン・カリキュラムは、厚生労働省、専門医認定・評価機構の定めた専門医制度整備基準に沿って、日本手外科学会が作成したものです。ガイドラインには、医師・患者の信頼関係、患者の権利と医師の義務、チーム医療連携、医の倫理など、「期待される医師」となるための必要な項目が含まれており、「手外科専門医」として必要な事項、救急医療に関する分野も研修するように明記されています。
カリキュラムには手外科すべての分野の疾患に関連した麻酔、手術技術の評価が技術難易度別に分類され、研修レベルごとに評価を行うことができるようになっています。
・「手外科専門医」試験は
知識と判断力は筆記試験で審査し、専門医として患者さんに適切に対応できるかどうかの能力は面接試験により審査します。また、自らが執刀した手術症例については、面接試験でその技量を判断しています。
・「手外科専門医」資格を継続するためには
日本手外科学会により定められた研修教育を受けて、最新の医学を理解し、技術の研鑽を継続することを義務付けられています。特に、過去5年間に行った症例の提出を義務付け、技術の維持、向上が行われていることを確認することになっています。