日本手外科学会理事長からご挨拶

“手のケガや病気で困ったときは手外科医へご相談ください”

理事長 酒井昭典

 日本手外科学会会員を代表して、皆様へ学会活動の紹介も兼ねてご挨拶させていただきます。日本手外科学会は、昭和32年に創設された歴史のある学会です。現在では約3,400名の会員が、人間の体の中で最も繊細な運動と最も鋭敏な感覚を持つ”手”について、患者さんにより良い治療が提供できるように、臨床的な研究や基礎的な研究を行っています。年1回、会員が集まって成果を報告し、議論する場である学術集会を開催しています。教育研修会や手術手技向上のための研修会などを通じて、学会員は、常に新しい知識の修得と手術手技の向上に努めています。

 手外科医は、手のケガや病気に対して専門的な知識と技術をもった外科医です。具体的には、手の骨折や脱臼、腱断裂、靱帯損傷、指や腕の切断、皮膚の欠損、腱鞘炎、指や手の変形、手の変形性関節症、リウマチによる手の障害、拘縮(硬くなって動かない)、末梢神経損傷や障害(手のしびれや麻痺)、先天性疾患、感染(化膿)、骨・軟部腫瘍などを治療しています。私たち手外科医は、手の機能障害や整容で悩む患者さんがひとりでも少なくなるよう最善の予防と治療に努めています。

 手は人間にとって特別で大切な器官です。顔を洗う、歯を磨く、箸を使う、スマホやパソコンの操作、車の運転、楽器の演奏、テニスや野球などのスポーツなど、手は多くの活動に関与しています。手がケガや病気になって使えなくなると、たちまち様々な場面で不自由さを感じることになります。手の良好な機能は、各種の職業やスポーツにおいて最高のパフォーマンスを行う上で必要不可欠なものです。また、手は労働環境や生活環境、スポーツや加齢の影響を受けやすい部位でもあります。

 国民の皆様が、手に関心を持ち、健康な手を持っていることに感謝し、手の障害に対して社会的関心をもつことを推進するため、日本手外科学会では、8月10日を「手(ハンド)の日」として日本記念日協会に登録いたしました。手のケガや病気の啓発活動とその専門家である手外科医の認知度向上に努めています。手外科医が取り組んでいる最先端医療技術には、手の関節軟骨・腱・末梢神経の再生医療、診断・治療法選択におけるAI(人工知能)の活用、ロボット・コンピューター支援手術、痛み・しびれの病態解明、手指の人工関節、実用性の高い筋動義手、関節鏡を用いた低侵襲手術などがあります。また、長寿社会を迎えた我が国において、骨粗鬆症を伴った手首(橈骨遠位端)の骨折、手指の変形性関節症、ばね指、手根管症候群などは、患者さんの数がとても多く、手外科医が適切に治療することによって、中高年齢者が生き生きと充実した生活を送れるように支援しています。社会が求める最新の医療を提供し、生活の質の向上、健康寿命の延伸に貢献できるよう努めています。

 手外科を専門とする医師は、整形外科あるいは形成外科全般の診療経験とともに、手外科という専門領域の知識と経験を持っています。手のケガ、使いづらさ、痛み、しびれ、変形などでお悩みの方がおられましたら、手外科専門医名簿をこのホームページに掲載しておりますので、診察日等をご確認の上、受診し、ご相談していただければ幸いです。