手外科とは
この度は、日本手外科学会ホームページをご参照いただき、ありがとうございます。
手は人間にとって特別な器官であることは、皆様もご承知でしょう。二本足で直立することで、自由となった手により道具を自由自在に操る能力を獲得したことが人類を進化させました。とりわけ親指(母指)と人差し指(示指)で物をつまむ動作は人間のみが獲得した機能です。また、目は見るため、耳は聞くためにあるように、手は触ることでたくさんの情報を知覚する重要な五感機能の一つです。加えて、手は手話、ダンス、拍手など表現の手段にも使われます。さらに、仏像の印相や手相占いなどのように、運をあらわすミステリアスな側面も持っています。人間は、朝起きるとすぐ手を使います。顔を洗う、歯を磨く、箸を使う、お化粧、スマホを操作する。仕事に出れば、パソコン操作、車の運転はもちろんのこと、つまむ、握るなどの動作はほとんどの仕事に関与しています。余暇の楽器演奏、テニスや野球などのスポーツ、手を使わないスポーツであるサッカーでさえスローインに手を必要とします。
「手外科(てげか)って何ですか?」とよく訊かれますが、このように人間の行動に密接に関わっている手の怪我や病気を治療する診療科が、手外科です。骨、関節、脊椎脊髄、筋腱などの疾病や外傷を治療する整形外科、そして身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、特殊な技術を駆使して機能と形態の両面を治療する形成外科があります。これらの診療科は耳にしたことがあるかと思いますが、内科、外科、小児科、産婦人科などと同様に日本専門医機構が認定する基本診療科に分類されます。この整形外科あるいは形成外科の専門医資格を取得し、さらに手外科の専門研修を終え、専門医試験に合格した医師が手外科専門医です。手外科医は、肘~手指までの骨折、脱臼、切創、挫滅創などの外傷、腱鞘炎、テニス肘などの腱の障害、へバーデン結節や母指CM関節症などの変形性関節症、手根管症候群などの末梢神経障害、先天性の障害や関節リウマチによる手指変形、などを治療します。さらに、手術用ルーペや手術用顕微鏡を用いて微細な手術を行うマイクロサージャリーという技術を駆使して、切断指の再接着、上肢や下肢の骨や皮膚の再建なども担当します。
日本手外科学会では、一般の皆様が手に関心を持ち、健康な手を持っていることへの感謝、あるいは、手の不自由な人々に対する社会的な関心を盛り上げ、 手の怪我、病気、しびれの改善に従事している手外科の存在を知ってもらう「手(ハンド)の日」を、8月10日に日本記念日協会に登録させていただきました。
21世紀に手外科が取り組んでいる最先端医療技術には、関節鏡を駆使した低侵襲手術、手指の人工関節、人工神経の開発、コンピューター支援手術、ダヴィンチ手術などがあります。また長寿社会を迎えた我が国において、手首(橈骨遠位端)の骨折、手指の変形性関節症、ばね指、手根管症候群などは、患者さんの数がとても多く、高齢者が生き生きと充実した生活を送れるように支援しております。
手の怪我、使いづらさ、痛み、しびれ、変形でお悩みの方がおられましたら、手の治療のスペシャリストである手外科専門医名簿をホームページに掲載しておりますので、活用していただければ幸いです。
2019年8月
一般社団法人 日本手外科学会
第8代理事長 加藤博之